電池の性能評価
-エボルタと100円均一の電池はどの程度違うのか?-

乾電池がどの程度長持ちするかを各社のアルカリ、ニッケル水素、マンガン電池 について比較しました。

ニッケル水素やリチウムイオンなどの 充電池を購入するときには、 mAh単位で記された容量を比較することが多くあります。 しかし、乾電池にはそうした表記は見当たりません。 これには以下の理由が考えられます。

  1. 自己放電があるために正確な容量の算定が難しい
  2. どの程度の速さ(電流値,A)で放電するかにより(放電時間率)、実際に取り出せる電力量(Ah)は大きく変化する

以前の記事で、デジタルマルチメーターを用いた自動計測装置を作成しましたので 100円ショップ、家電量販店など様々な値段で販売されているアルカリ、マンガン、大容量電池(エボルタ), 充電式電池(ニッケル水素電池)の容量を比較いたしました。大きさは最も一般的に使用されている単三を用いました。デジタルカメラでの使用や電動模型の競技でのご利用での参考になれば幸いです。



測定に用いた電池


右下から時計回りに 写真外(白い色で有名な)

エネループは充電式の電池(二次電池)ですので 価格の比較はできませんが、同じアルカリ乾電池といっても 最高価格は「グランドキャニオンを登る模型」のCMで有名な エボルタ180円/一本から、100円/14本で販売されているGP製品まで 15倍の開きがあります。価格と種類をまとめたのが以下の表です。

メーカー
品名
一本あたりの価格種別
SANYO エネループ250円ニッケル水素(二次電池)
Panasonic EVOLTA180円アルカリ
SONY STAMINA EX95円アルカリ
三菱Power ALKALINE G50円アルカリ
GP アルカリ25円アルカリ
マンガン KEEPMAX BLACK12.5円マンガン

一般には、高い電流値で用いるデジカメやミニ四駆などの模型自動車用途には @ニッケル水素 > Aアルカリ >Bマンガンで性能の順位付けができるといわれています。 なかでもサンヨーのエネループは、自己放電が非常に小さく使いやすい電池として有名です(久しぶりに出してきても、減っていない)。大々的に宣伝が打たれたPanasonicのEVOLTAが 金額通りの高い性能を示してくれるのか、という点が気になるところです。


測定系

測定に用いたのはセメント抵抗です。ここでは 0.5、1、2 Ωの三種類の抵抗をパソコンで使う CPUクーラーの上に貼りつけました。消費電力から考えて ほとんど温度が上昇することはないですが、 できる限り室温近くに保って抵抗値の温度変化を少なくすることを 考えました。下に見える白いシールは熱伝導性密着シートです。 今回は0.5Ωと2Ωの身を用いましたが 長期的には複数の抵抗を接続して任意の放電電流での 容量の測定をすることが可能になります。 抵抗を選ぶときのポイントは定格電力にあります。 今回は最も電流がたくさん流れる0.5Ωのもので10 Wを選定しました。 単純に計算して2 Vで4 A流れるので 8 Wの熱を発生します。 乾電池一本の使用では全く問題がありません。

測定に用いたセットは下の写真のようになっています。

デジタルマルチメーター(Mastech MS8218)-シリアル-USB-パソコン-Excel-VBAと いった接続で測定をしています。 測定系の問題としては0.5Ωという非常に低い抵抗に 大電流を流す場合には電池ケースでの接触抵抗や 抵抗の金属線へのコンタクトが大きな影響を与えることが分かりました。 実際にグラフのなかで電圧値が不連続に変化している点を見つけることが できますが、これは不注意で測定中にケーブル等に触れてしまい、 接触抵抗が変化したことによるものです。 トータルの容量にはそれほど大きな影響は与えませんが、 大電流で放電する場合には金メッキのコンタクトやできる限り太く 抵抗の低い配線を半田できちんと電気接触させるといった テクニックが必要となります。また、大電流を流すと 電池もかなり熱を持ちますので十分な注意が必要です。


放電試験結果

まずは自己放電が少ない ニッケル水素電池として有名な SNAYOのエネループを試験いたしました。 充電して25℃程度の室温に 一週間保持した後に測定をしました。

上の図は0.5 Ωの条件で約2 Aの放電をさせて場合の結果です。 2本の電池を同一条件で測定すると放電曲線はほとんど一致しました。 電池自身のばらつきも少ないですし、測定の再現性も悪くないようです。 0.7 Vまでの放電した時点までの総電流量から容量を見積もりました。 eneloopでは1700 mAh程度となりました。エネループにはtyp. 2000 mAh, min 1900 mAhとなっておりますので 少し電池が弱ってきているのか、放電電流をもう少し落とした条件で測定した結果なのかのどちらかです。
使用する機器によりこの終端電圧値は 変化しますので、後の比較では0.4 Vまでの 放電での値も比較しております。


電池の比較試験

0.5Ω放電 1時間以内で使い切る用途では、、、

上述の条件で測定した複数の電池の容量を比較します。 下の図は0.5 Ωで放電させたときに0.7(赤)または0.4 V(青)に 達するまでに取り出すことができた電流量をmAh単位で示しています。



0.5Ω放電における容量

メーカー
品名
一本あたりの価格容量 (mAh)
0.4 Vまで
容量 (mAh)
0.7 Vまで
SANYO エネループ250円17401716
Panasonic EVOLTA180円12511109
SONY STAMINA EX95円1019867
三菱Power ALKALINE G50円1031952
GP アルカリ25円1046741
マンガン KEEPMAX BLACK12.5円27431

エネループでは0.7 Vと 0.4Vまでの放電で容量に大きな違いがありません。 これは、0.8Vを切ったあたりから急激に電圧が降下するためです。 当初の予想では、グランドキャニオンまで登ってしまうEVOLTAが 他の電池に比べて圧倒的に容量が大きいと考えていましたが、 残念ながら、ある種の過大広告(正当な比較をしていない)であったようです。 EVOLTAは他のアルカリ乾電池と比較して1割から2割程度容量が大きいだけでした。 意外にも健闘したのは一本たったの25円のGPのアルカリ電池でした。 0.4 Vまででの比較ではSONY,SANYOとそれほどほとんど違いはありません。 また、マンガン電池はこうした大電流の用途では全く役に立たないことが分かります。 では、放電曲線を見てみましょう。

ニッケルい水素のエネループは開始電圧はやや低いですが 高い電流値を長時間保っていることがわかります。 SONY,三菱,EVOLTAの3つは同様の放電曲線を描いていますが、 EVOLTAが最後のひと踏ん張りで大きい容量を出していることがわかります。 日常の用途では”少し長持ちするかなあ”という感じはあるかもしれません。 他方、GPは内部抵抗が大きいためか、電流量が制限されていますが、 その分長持ちしていることがわかります。マンガン電池は 一気に放電してしまい、ほとんどパワーを出せていません。 電流量を1/4にして約3-4時間程度で使い切る用途では 容量がどうなるかを比較したのが 次のグラフになります。

2Ω放電 4時間で使い切る用途では、、、

ここでもエネループの強さは際立っていますが、 電流量を下げたためにアルカリ電池との差は小さくなっているようです。 しかし、悲しいのはEVOLTAです。15倍の価格がありながら、 0.7 V、0.4Vまでのどちらを比較してもGPよりも小さい電力しか 出さないことがわかります。 また、この程度の電流値になると、マンガン電池も少しは使えるようになってきます。 再び、放電曲線を見てみます。放電開始から100分程度において 内部抵抗がやや少なく、電流量が大きい時間帯がありますが、 EVOLTAは明らかに短寿命です。こうした用途ではEVOLTAを選ぶ理由はありません。 一本50円の三菱か25円のGPがお勧めです。

以上の結果をまとめます、2Ωでは

2Ω放電における容量(約3-4時間で使い切る用途)

メーカー
品名
一本あたりの価格容量 (mAh)
0.4 Vまで
容量 (mAh)
0.7 Vまで
SANYO エネループ250円18711858
Panasonic EVOLTA180円15041497
SONY STAMINA EX95円13821376
三菱Power ALKALINE G50円15981585
GP アルカリ25円16661616
マンガン KEEPMAX BLACK12.5円538349

5 Ω放電 12時間で使い切る用途では、、、

この程度の低電流で使用する場合には ニッケル水素では良い成績が残せないことが分かります。 eneloopの容量が前回の2 Ωより若干下がっていますので 充電後に測定までにわずかに自己放電した可能性がありますので 直接の比較は難しいかもしれません。今後の測定では 充電状態を厳密に同じにする必要がありそうです。 乾電池は日常的に手に入る新品のものを揃えましたので、それらの比較可能です。 アルカリではエボルタが最低で、最も内部抵抗が高そうな GPの成績がずば抜けて良いことが分かります。 値段を考えるとやはりGPでしょうか。

以上の結果をまとめます、5Ωでは

5Ω放電における容量(約12時間で使い切る用途)

メーカー
品名
一本あたりの価格容量 (mAh)
0.4 Vまで
容量 (mAh)
0.7 Vまで
SANYO エネループ250円18281815
Panasonic EVOLTA180円18451839
SONY STAMINA EX95円19571950
三菱Power ALKALINE G50円19821975
GP アルカリ25円22712242
マンガン KEEPMAX BLACK12.5円807601

まとめ

○エネループはやはり強い = 小さい内部抵抗と大きい容量。

○1時間以内で使い切る用途にはEVOLTAは選択肢の一つ。
ただし、SONY、三菱のアルカリ乾電池との違いは1割くらい。

○連続3時間で使い切るの用途ではGPか三菱のアルカリ。

○連続12時間で使い切る用途ではGP。一本25円で十分。

○マンガン電池はもう少し優しい用途(時計など)に使いましょう。



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